Q11 チョコレート・ココアが医療や介護の現場で活用されていると聞きますが、具体的にどのように使われているのですか?

A

主にココアについて、病院や介護現場で使用例が報告されています。その目的は大きく4つに分類することが出来ます。
(1)排便をコントロールする(便秘、難治性下痢、便臭の改善)。
(2)褥瘡(床ずれ)を改善する。
(3)ミネラル(主に銅)の不足による貧血を改善する。
(4)濃厚な流動食の風味を改善する。

高齢化社会が進む中で、ココアを病院や介護現場で使った報告が学会や論文で報告されています。

1 排便コントロール

高齢者は食が細く、また筋力や体力が衰えるため便秘気味の人が多いと言われ、排便コントロールは重要な課題となっています。ココアは便秘を改善し、難治性の下痢にも効果が高いと報告されています。また、便臭の改善効果も報告されています。高齢者自身のQOLの向上及び介護者、看護者の労働軽減に有用と考えられます。

施設名 発表タイトル 発表場所
埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター(埼玉県) ココアと救命救急センター:ココア添加経腸栄養の試み バイオインダストリ、vol.16, 1999, 49-56他 排便間隔
便  臭
社会医療法人関愛会 佐賀関病院(大分県) 経腸栄養患者(経胃腸的空腸廔療)の難治性下痢に対してココアが有効であった一例 第26回および第27回日本静脈経腸栄養学会 2011, 2012, 2015, 2016 下  痢
JA長野厚生連 北信総合病院(長野県) 寝たきりの患者の排便コントロールの検討:ココアの効果 日本農村医学会雑誌、vol.58, 2009, 305 便  秘
新日鉄室蘭総合病院(現:社会医療法人 製鉄記念室蘭病院)(北海道) 経管栄養患者にココアを用いた排便コントロールの検討 静脈経腸栄養、vol.23, 2008, 347 新日鉄室蘭総合病院医誌、vol.41, 2008, 62-64 下  痢
便  秘
公益社団法人宮崎市郡医師会 宮崎市郡医師会病院(宮崎県) 高齢患者の排便コントロールの検討:ココアの効果 第37回日本看護学会抄録集老年看護、2006, 24-25 便  秘
独立行政法人国立病院機構 琉球病院(沖縄県) 抗精神病薬を服用している認知症高齢者の排便コントロール:ココア飲用による効果 沖縄県看護研究学会集録、2012, 27th,31-34 便  秘
医療法人社団充会 上川病院(東京都) 臨床において確認されたココアの便通・便臭改善効果 月刊総合ケア、vol.12, 2002, 88-90 便  秘
便  臭
特定医療法人社団順心会 順心(旧:幸生)リハビリテーション病院(兵庫県) 便秘改善にココア療法を試みて 第7回順心会・のじぎく福祉研究交流会、2013 便  秘
医療法人仁心会 福山病院(鹿児島県) ココアによる排便習慣の改善~ラキソベロン液に頼らない排便コントロール 九州精神神経学会・九州精神保健学会プログラム・抄録集、2012, 65th58th, 132 便  秘
町立大淀病院(奈良県) 経腸栄養中の患者に対する排便コントロール(ココアを試みた症例) 静脈経腸栄養vol.29, 2014, 476 便  秘

2 褥瘡(床ずれ)の改善

寝たきりになると、栄養不足や運動不足から床ずれが起こりやすくなります。ココアには、床ずれ予防効果があるとされ、創傷治癒に必要なミネラル(亜鉛、等)が豊富に含まれていることやココアの抗炎症効果がその要因の一つと考えられています。

施設名 発表タイトル 発表場所
横須賀市立市民病院(神奈川県) 広範囲褥瘡のある低栄養患者に対してココアを使用して栄養改善がはかれた-事例 静脈経腸栄養、vol.27, 2012, 349
鳥取市立病院6階西病棟(鳥取県) ココアゼリー経口摂取による褥瘡のある長期臥床患者の創傷治癒促進に対する援助 鳥取市立病院雑誌 vol.16, 2008, 69
特定医療法人壽生会壽生病院(島根県) 褥瘡治癒促進におけるココアの有効性-長期経腸栄養患者の微量元素の吸収と褥瘡との関連性- 第36回老年介護、2005, 48
奈良春日病院ひまわり棟(奈良県) ココア使用による褥瘡の早期改善 褥瘡会誌、2012, 155

3 ミネラル不足の改善

長期間に渡り経管栄養食品を摂取していると、主に銅の不足による貧血が起こることが報告されています。現在の経管栄養食品は改良が進み、銅不足による貧血は少なくなりましたが、経管栄養を摂取する経路(空腸瘻)によっては今も銅不足が報告されています。
ココアは効果的に銅を補給することができる食品と言われています。

施設名 発表タイトル 発表場所
宜野湾記念病院(沖縄県) 長期経腸栄養患者の銅欠乏に対する、ココアによる銅補充及び維持療法の検討 日本老年医学会雑誌、vol.37, 2000, 304-308他
自治医科大学消化器肝臓内科(栃木県) 短腸症候群に対する長期中心静脈栄養下で、銅欠乏による汎血球減少が認められ、ココア内服療法により改善を得られた一例 日本消化器病学会雑誌 vol.106, 2009, A401
西美濃厚生病院(岐阜県) Predominant copper deficiency during prolonged enteral nutrition through a jejunostomy tube compared to that through a gastrostomy tube. Clinical nutrition vol.30, 2011, 585
聖路加国際病院(東京都) Cocoa supplementation for copper deficiency associated with tube feeding nutrition. Internal medicine, vol.45, 2006, 1079-85.
佐賀社会保険介護老人保健施設サンビューさが(佐賀県) ココア投与中断に伴って生じた長期経腸栄養高齢入所者の貧血に対するココア再投与の有効性。 看護科学研究、wol.10, 2012, 57-60
八街総合病院 栄養課(千葉県) 完全静脈栄養中に鉄不応性の貧血を来し、ココアの利用で改善した多系統萎縮症の一症例 第26回および第27回日本静脈経腸栄養学会 2011, 2012
千葉県がんセンター(千葉県) 食道癌術後縫合不全、短腸症例にて貧血で発見された鉄・銅欠乏:ココア投与の効果 第21回千葉県NSTネットワーク、2013

4 食事の風味改善

高齢者は食事量が少なくて栄養不足の人が多いことが問題になっています。ココアは栄養豊富な濃厚流動食や牛乳の風味を改善し、これらを摂取しやすくする目的で使用されています。

施設名 発表タイトル 発表場所
赤穂中央病院(兵庫県) NSTの試みの一つとしてココアプリン考案 赤穂中央病院HP
University of Valladolid
(スペイン)
Oral nutritional Supplements and Taste Adherence in Malnourished Adults Inpatients, Effect on Adhesion during Hospital Stance Ann Nutr Metab
2015;67: 205-209

チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムでの関連発表