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Q10 チョコレート・ココアの研究が日本をはじめ世界中で進んでいると聞きますが、これまでにどんなことがわかっていますか? 4 認知機能(Cognitive Function) 認知機能は、日常生活をすごすために必要な「記憶する」「考える」「判断する」「人とコミュニケーションとる」などの人の知的機能のことです。高齢者の物忘れやうつ病、更には認知症予備群である軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment :MCI )やアルツハイマー病に対するカカオポリフェノールの効果が研究されています。 代表的な介入研究
ST. Francis. et al.(2006)
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G. Desideri et al.(2012)
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FA. Sorond et al.(2013)
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D.Mastroiacovo et al.(2015)
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S. Neshatdout et al.(2016)
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代表的な総説
フラボノイドには、神経毒から神経細胞を保護する作用や神経炎症を抑制する作用があり、また記憶能力や学習能力、認知機能を促進する可能性もある。これらの作用は、2つの経路により生じているようである。1つ目は、ニューロンシグナル伝達カスケードと相互作用することで、神経毒により誘発されるアポトーシスを阻害し、ニューロンの生存や分化を促進する作用である。2つ目は、末梢血流や大脳血管血流を促進することで、血管の新生や海馬の神経細胞の成長を誘導する作用である。これらの作用により、フラボノイドに富む食品を生涯にわたって摂取することは、様々な神経障害に関連する神経変性を抑制し、認知機能の低下を抑制する可能性がある。
フラボノイドには認知機能に有益な影響を与える可能性があると、次々と報告されている。加えて、アルツハイマー病様病態の発症を阻害し、齧歯類モデルにおける認知機能の欠損を回復させることが示されたフラボノイドの種類が増えており、フラボノイドの認知症に対する潜在的な治療有用性が示唆されつつある。フラボノイドに富む食品の作用は、吸収されたフラボノイドとその代謝産物が、多くの細胞や分子標的と直接相互作用し、媒介されるようである。同時に、血管系に対しては、脳血流の増加や海馬での神経発生を誘導することで、認知機能を向上させている可能性もある。フラボノイドには、神経変性病態の進行を遅らせ、認知機能を促進する可能性がある。
吸収されたフラボノイドは、学習と記憶に関する脳領域、特に海馬に入り込み蓄積される。フラバノールの神経生物学的働きは、ふたつの主要な方法で起きると信じられている。ひとつは、細胞カスケードによる直接の相互作用をとうして神経発生、神経機能、脳接続性を促進する神経保護かつ神経調節タンパクの発現を生み出す。ふたつ目は、脳や感覚系における血流の改善と血管新生による。年令、病気に関連する認知の低下を含む神経認知および挙動への長期間フラバノールを摂取することによる保護効果は、通常の年令、痴呆、脳卒中の動物モデルにおいて示された。いくつかの人間の観察および臨床研究がこれらの見解を裏付けているように見える。
チョコレートおよびその成分の、認知機能や気分への作用について系統的レビューを行った。また精神への活性効果を持つ画分についても評価した。気分に関して評価基準を満たした8報のうち、5報は気分を改善する、または負の気分を減弱する効果を示していた。認知機能に関して評価基準を満たした8報のうち、3報は認知増強の明確な証拠を示していた。2報の研究では行動上の利点が示されていなかったが、脳の活性化パターンに大きな変化が確認された。気分に対する影響が、チョコレートによる感覚的特性またはチョコレート成分による薬理学的作用のいずれかに起因するのかは不明である。カカオポリフェノールの急性摂取による認知機能への急性な影響は、2報報告されている。ココア成分による脳機能の変化の実証とともに、チョコレートの認知機能促進効果について更なる研究が求められる。
ココアパウダーやチョコレートにはフラボノイドを中心とした、非常に多くの抗酸化分子が含まれ、フラボノイドはエピカテキンの形で最も豊富に存在する。これらの物質は、脳に有益な作用を示す。これらは脳に入り込み、脳灌流を広範的に刺激する。
最近の研究で、ポリフェノール代謝物は血流脳関門を通過し、脳に生化学応答をもたらすことが示されているが、ポリフェノールがどうやって脳機能を改善しているかという重要な疑問は依然解明されていない。ポリフェノールのどういった代謝物が作用しているかを解明するためにも、臨床用にカカオ抽出物の調製方法やポリフェノールの分析方法を最適化、標準化すべきである。
最近の研究は脳血管危険因子と認知機能におけるフラボノイドに富むココアやチョコレートの好ましい効果に注目してきた。このレビューの目的は認知機能、特に痴呆を妨げる血管や抗酸化作用の推定されるメカニズムに注目して、カカオの効果に関する新しい見解を総括することである。
カカオフラボノイドによる人間の認知力の強化ついてのミニレビュー。 代表的なIn vitro試験
ヒトアルツハイマー病のin vitroモデルを用いて、カカオポリフェノール抽出物の効果を調べた。その結果、カカオの抗酸化作用の確認以外にも、カカオポリフェノールがAβプラーク処理した細胞とAβオリゴマー処理した細胞の両方において、BDNF(脳由来神経栄養因子)生存経路の活性化により、神経保護作用を誘導し、神経突起ジストロフィーを阻止することを実証した。今回の結果は、神経変性の予防剤としてのカカオパウダーの使用を、さらに支持する結果となった。
3種類のカカオ抽出物(viz. Natural, Dutched, Lavado)が、Aβ42とAβ40のオリゴマー化に与える影響を、光誘起非修飾タンパク質の架橋の手法により評価した。またシナプス機能に対するカカオ抽出物の影響を評価するために、Aβオリゴマーに曝されたマウスの脳海馬片における長期増強作用を測定した。その結果、カカオ抽出物はAβのオリゴマー化を抑制するのに有効であり、特にLavado抽出物が最も効果的であることが示された。Lavado抽出物はAβオリゴマーにより減少した長期増強作用を回復させるのに有効であったが、Dutched抽出物にそのような効果はなかった。 チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムでの関連発表
引用文献 [1] ST. Francis et al. J Cardiovasc Pharmacol. 2006, 47(Suppl 2): S215-S220 The effect of flavanol-rich cocoa on the fMRI response to a cognitive task in healthy young people. [2] G. Desideri et al. Hypertension. 2012, 60: 794-801 Benefits in Cognitive Function, Blood Pressure, and Insulin Resistance Through Cocoa Flavanol Consumption in Elderly Subjects With Mild Cognitive Impairment [3] FA. Sorond et al. Neurology. 2013, 81(10): 904-909 Neurovascular coupling, cerebral white matter integrity, and response to cocoa in older people [4] D. Mastroiacovo et al. Am J Clin Nutr. 2015, 101(3): 538-548 Cocoa flavanol consumption improves cognitive function, blood pressure control, and metabolic profile in elderly subjects: the Cocoa, Cognition, and Aging (CoCoA) Study - a randomized controlled trial [5] S. Neshatdoust et al. Nutrition and healthy aging 2016, 4 (1): 81-93 High-flavonoid intake induces cognitive improvements linked to changes in serum brain-derived neurotrophic factor: Two randomised, controlled trials. [6] JP. Spencer. Genes Nutr. 2009, 4(4): 243-250 Flavonoids and brain health: multiple effects underpinned by common mechanisms. [7] RJ. Williams et al. Free Radic Biol Med. 2012, 52(1): 35-45 Flavonoids, cognition, and dementia: actions, mechanisms, and potential therapeutic utility for Alzheimer disease [8] A. Sokolov et al. Neuroscience and Biobehavioral Reviews 37(2013): 2445-2453 Chocolate and the brain: Neurobiological impact of cocoa flavanols on cognition and behavior [9] A. Scholey et al. Nutrition Reviews. 2013. 71(10): 665-681 Effects of chocolate on cognitive function and mood: a systematic review [10] A. Nehlig. Br J Clin Pharmacol. 2012, 73(3): 716-727 The neuroprotective effects of cocoa flavanol and its influence on cognitive performance [11] L. Dubner et al. J Alzheimer’s disease. 2015, 48(4): 879-889 Recommendations for Development of New Standardized Forms of Cocoa Breeds and Cocoa Extract Processing for the Prevention of Alzheimer’s Disease: Role of Cocoa in Promotion of Cognitive Resilience and Healthy Brain Aging [12] D. Grassi et al. Curr Pharm Des. 2016, 22(2): 145-51 Brain Protection and Cognitive Function: Cocoa Flavonoids as Nutraceuticals [13] V. Socci et al. Frontiers in Nutrition. 16 May 2017 Enhancing Human Cognition with Cocoa Flavonoids [14] A. Cimini et al. J Cell Biochem. 2013, 114: 2209-2220 Cocoa Powder Triggers Neuroprotective and Preventive Effects in a Human Alzheimer's Disease Model by Modulating BDNF Signaling Pathway [15] J. Wang et al. J Alzheimer’s disease. 2014, 41(2): 643-50 Cocoa Extracts Reduce Oligomerization of Amyloid-β: Implications for Cognitive Improvement in Alzheimer's Disease. |
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