Q10 チョコレート・ココアの研究が日本をはじめ世界中で進んでいると聞きますが、これまでにどんなことがわかっていますか?

7 抗菌、抗ウイルス

カカオポリフェノールは幅広い抗菌性を有していることが知られています。また、カカオに含まれる不飽和遊離脂肪酸がヘリコバクターピロリに対する抗菌効果があることが報告されています。

抗ヘリコバクターピロリ

  • S. Sato et al. (1999)[1]

胃炎や胃潰瘍、そして胃がんの原因の一つとして注目を集めているヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)に対するココア熱水抽出液の抗菌効果を調べた。ピロリ菌の殺菌効果および胃上皮細胞への付着抑制効果をココア熱水抽出液が有していることを発見した。また、無菌マウスを用いた試験で、ピロリ菌の胃内への定着を抑制することが明らかとなった。

下痢原生細菌への抗菌効果

  • T. Takahashi et al. (1999)[2]

ココア熱水抽出液の下痢原生細菌への抗菌効果を調べたところ、多くの下痢原生細菌に対して抗菌効果を有していることが明らかとなった。ポリフェノールが主たる抗菌成分であることを確かめた。

抗マラリア

  • Fk. Addai (2010)[3]

カカオ中の成分が、マラリアやその媒介虫に及ぼす影響に関して文献調査を行った。その結果、カカオには次の5つのメカニズムにより抗マラリア作用を有する可能性が示唆された。(1)血漿中の抗酸化物質の増加、(2)一般的な膜効果、特に赤血球膜効果、(3)血漿中の一酸化窒素濃度の増加、(4)カカオフラボノイドとその誘導体の抗マラリア活性、(5)ココアバターやポリフェノール、マグネシウム、亜鉛を含むカカオ成分による免疫系の強化。本研究により、カカオは摂食による抗マラリア効果を与えうるという仮説が立てられる。

抗インフルエンザウイルス

  • M. Kamei et al. (2015) [4]

脱脂カカオパウダーを熱水抽出したカカオ抽出物(CE)は、イヌ腎臓尿細管上皮(MDCK)細胞に対する、ヒトインフルエンザウイルスA(H1N1, H3N2)、ヒトインフルエンザウイルスB、トリインフルエンザウイルス(H5N1, H5N9)の感染を用量依存的に阻害した。CEはMDCK細胞へのウイルスの吸着を阻害した。動物試験では、致死量のインフルエンザウイルスを鼻腔内投与したマウスに対して、CEは生存率を有意に上昇させた。ヒトの介入試験では、抗A(H1N1)pdm2009インフルエンザウイルスワクチン接種の前後3週間、ココアを摂取させる群と、摂取させない群に分けた。 中和抗体力価とナチュラルキラー細胞活性は両群で有意に増加したが、ナチュラルキラー細胞活性の上昇はココア摂取群の方が有意に高かった。

チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムでの関連発表

引用文献

  1. [1]S. Sato et al. Prog Med. 1999, 19(5): 1207-1213
    The effect of cocoa extract on the growth, adhesion and Colonization of Helicobacter pyroli.
  2. [2]T. Takahashi et al. Kansenshougaku Zasshi. 1999, 73(7): 694-701.
    Antibacterial effects of cacao mass on enterohemorrhagic Escherichia coli 0157:H7
  3. [3] FK. Addai Med Hypotheses. 2010, 74(5): 825-30
    Natural cocoa as diet-mediated antimalarial prophylaxis
  4. [4]M. Kamei et al. J Sci Food Agric. 2016, 96(4): 1150-1158
    Anti-influenza virus effects of cocoa