世界の歴史
チョコレートの始まり(アステカにおけるカカオの用途)

神様の食べ物:"ショコラテ"
アステカ人社会において、カカオは神秘的な力を持つものとして大切にされましたが、カカオを利用できたのは王族・貴族・上流階級などに限られました。
カカオが貴重だったのは生産地が限られ、容易く手に入れることができないだけでなく、カカオ豆自体が堅く、簡単に腐ったり潰れたりしないことから、交易のために長距離を移動させることができました。輸送途中に泥棒に襲われないために戦士が護衛につきました。
カカオの用途
儀式の捧げものとして
農作物の種まきや収穫(豊穣)の祈りへの供物となり、また、人の誕生、成人、結婚や死に至る通過儀礼で神々へ捧げられました。
薬として
疲労回復・滋養強壮や精神高揚などの薬効が知られ、カカオに薬草を混ぜて様々な病気の治療に用いられました。
貢納・交易品として
カカオは産地から首都テノチティトランへの貢物として送られてきました。スペイン人は征服後もこのシステムを利用しました。
貨幣として
テノチティトランがスペイン人によって陥落間もないころの1545年に書かれたナワトル語(アステカ族の言語)の記録にカカオの貨幣価値が書かれています。
- よく太った雌の七面鳥一羽:粒の揃ったカカオ豆100粒、またはしなびたカカオ豆120粒
- 雄の七面鳥:カカオ豆200粒
- 野うさぎまたは森うさぎ:カカオ豆100粒
- 小さなうさぎ:カカオ豆30粒
- 七面鳥のたまご1つ:カカオ豆3粒
- 摘みたてのアボガド1つ:カカオ豆3粒
- 大きなトマト1つ:カカオ豆1粒

飲み物として
アステカ族にとってもカカオは飲みものとして大切なものでした。貨幣として使われるほど価値があったため、摂取できたのは王族、貴族、上流階級、貿易商人などの特権階級でした。戦士はカカオが戦闘意欲を高揚させるという理由で飲むことができました。カカオは普段に飲むものではなく宴会や食事の後に供されたようです。
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カカオ(チョコレート)の飲料の作り方
カカオ(チョコレート)飲料の作り方
- アステカ族のチョコレートの作り方はマヤ族と同じようなものでした。
- 発酵・乾燥させたカカオ豆をほうろく状の土製のフライパンの様なのものに入れて弱火で煎って殻をとります。次いで「メターテ」と呼ばれる上面が少し弓なりになった石のまな板状のものにカカオ豆をのせ、麺棒のような石製の道具を使って粉砕します。すると、カカオ豆に含まれる油分(ココアバター)によりドロドロした状態(現在でいうカカオマス状)になります。このままでは苦く、油分も多くて飲みにくいので、苦みを和らげるためにいろいろな材料を加えました。トウモロコシ粉を加えると油分が和らぎ、食べ応えのあるおかゆ状になりました。とうがらしはスパイシーさを与え、チリやアチョーテ(ベニノ木の赤い実)などの香辛料は色付けに使われました。次いで水を加えて木製の撹拌棒(モリニーリョ)で激しくかき混ぜて泡を立て、これをすくって飲みました。撹拌するのは油分を散らして飲みやすくする効果もあったといいます。砂糖は入っておらず、冷たいものが基本でした。